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イノベーター理論と技術選択の戦略

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最近考えていたことをつらつらとまとめてみました。

TL;DR

  • 技術を採用する戦略をイノベーター理論に従って類型化した
  • 要求を満たすベストな選択をすべきで、マジョリティにいた方が安全
  • その上で、可能な範囲でアーリーアダプターやイノベーターを目指すことには意味がある

以下、本文です。

はじめに

情報システムに限った話ではありませんが、技術を利用して製品やサービスを提供するような場合、どういった技術を採用するか、という判断が必要になります。

その判断の基準としては、安定性や性能、組織内外の実績・ノウハウの有無など、いくつかあると考えられますが、ここではイノベーター理論とのアナロジーを用いて、取り得る戦略について考えてみたいと思います。

イノベーター理論については、下記あたりを一読してもらえればよいかと。

イノベーター理論 - MarketingPedia (マーケティング用語集Wiki)

戦略1 - イノベーター

冒険的で、新しい技術が出るとすぐに飛びつきます。
新しい技術は得てして枯れておらず、バグを含むこともままあるため、プロダクション環境で安定的に動作させるためには大きな苦労を伴うでしょう。

自ら技術を製品として研究・開発するような企業は、イノベーターにならざるを得ない状況もありそうです。

あるいは、市場にある製品で自分たちのニーズを満たすものがないような場合も、そのようなケースになり得そうです。
(製品を市場に出さず、プライベートに使用する場合は除く。)

戦略2 - アーリーアダプター

流行に敏感で、新しい技術の情報を収集し、使えそうなものを積極的に採用して、業界に普及させていく役割を担います。

技術的に業界をリードしていくような立場になると思いますが、イノベーター同様に、安定稼働させるための苦労は伴うものと考えられます。

戦略3 - アーリーマジョリティ

比較的慎重で、プロダクトがそれなりに成熟してから採用を決めます。

例えば、v1.0 が出てそれなりにバグが踏み抜かれた状態であるかどうかや、プロダクション環境での採用事例が出たかどうか、などが採用の決め手になるでしょう。

戦略4 - レイトマジョリティ

懐疑的で、業界内で採用している企業なりが多くなってから採用を決めます。

このときには、おそらく必要な情報・ノウハウは手に入りやすい環境が整っており、変わったことをしなければトラブルが起こるリスクは低いでしょう。

戦略5 - ラガード

最も保守的な層です。
古き良き枯れた技術を好み、セキュリティアップデートなど必要性に駆られない限りはバージョンアップを好みません。

エンタープライズ系の企業でこの層に該当する場合、サポートのない製品などはきっと採用されないのではないかと想像します。

どうすべきか?

大原則として、与えられた要求・要件に対して、最良の選択をすべきだと思います。

アーリーアダプターである必要はありません。
なるべくメジャーで実績のあるもの、なるべく機能・性能が優れたもの、組織内で知見・ノウハウがあるもの、できればサポートがあるか、コミュニティの規模が大きくて情報が得やすいものを採用すればいいでしょう。
複数の選択肢の間で、これらの要素のトレードオフが発生するでしょうが、与えられた納期や工数の範囲内で自由度を持って選択したらいいかな、と思います。

以上を前提とした上で、可能であればアーリーアダプターやイノベーターを目指す、というのは技術戦略的に価値があることだろうと思います。
それによって、競合に対して技術的に優位に立てるし、企業であれば技術力・技術的感度の高い人材を獲得できる機会が増えることもありそうです。

一方で、戦略1 で述べたように、要求によってはイノベーターやアーリーアダプターにならざるを得ないこともあるでしょう。

例えば、技術革新を起こそうとしている場合や、これまで業界内で実績がないような規模で製品・サービスを展開するような場合は、なんらか技術的なチャレンジをせざるを得ないことは十分に考えられます。

FacebookGoogle のような規模でサービスを展開している企業はそうそうないので、彼らはイノベーターになるべくしてなっていると言えるのではないでしょうか。

機会があってイノベーターやアーリーアダプターになることができたら、その立場は十分に活用するといいのではないかと思います。

まとめ(再掲)

  • 技術を採用する戦略をイノベーター理論に従って類型化した
  • 要求を満たすベストな選択をすべきで、マジョリティにいた方が安全
  • その上で、可能な範囲でアーリーアダプターやイノベーターを目指すことには意味がある